高取焼の歴史

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このページでは、高取焼の歴史に触れてみたいと思います。

高取焼略年譜  高取焼の概説

高取焼開窯400年祭の由来

筑前藩窯高取焼が開窯されて400年ということについての根拠は以下の通りである。

筑前福岡着の御用学者貝原益軒が、宝永六年(1709)に編纂した『筑前国続風土記』の巻之29土産考上・器用類の中にある「鷹取瓷器(やきもの)」である。
この文書を引用してみると、次のようになる。

鷹取瓷器、鷹取焼は朝鮮軍の時、長政公の手にも、朝鮮人あまたとらわれ来りし中に、瓷器を製する上手あり。名を改て八蔵と云。又加藤清正の手にも、一人上手あり。新九郎と云。二人ともに、高麗にて井土と云邑の者にて、八蔵は新九郎が聟可。八蔵か妻も同しく日本に来る。長政公其良工なる事を聞玉ひて、手塚水雪に命し、水雪か居城鞍手郡鷹取にて八蔵に瓷器を製せしむ。其後新九郎をも、鷹取に招き居らしめて、新九郎、八蔵相ともに製す。世に称する鷹取焼是也。

新九郎は程なく死す。忠之公の時に至り、小堀遠江守正一黠茶の宗匠たり。伏見に居住せらる。かの八蔵并其子八郎右衛門を相添て、伏見につかはし正一のこのみを受て、茶入茶碗水指等を製す。八郎右衛門は朝鮮の産也。其以下女子并末子の新九郎等は、鷹取にて生る。其後八郎右衛門は病気にして、末子新九郎家を嗣ぎて八蔵と號す。

又五十嵐次左衛門と云者あり。肥前唐津寺沢家に仕へ、彼家を浪人して、筑前に来る。此者迫戸瓷器の法を習ひ、其外種々の製を鍛錬せり。忠之公被召出、八蔵と同じく鷹取において、瓷器を作る。共に良工也。
鷹取焼茶入正一名を称せらるるもの、染川横岳秋の夜等也。横岳は酒井讃岐守忠勝へ、秋の夜は小笠原山城守長頼へ、忠之公より送らる。

染川は、国君にあり。同し時の製耳付の茶入も、名はなしといへとも、横岳によく似て、相をとらぬよし、正一甚賞せらる。染川と同しく、国君にあり。今の八蔵は朝鮮より来し八蔵が孫也。今の八郎は八郎右衛門が子なり。今の次兵衛は次右衛門か孫也。

慶長一九年の此より、鞍手郡内磯と云う所にて製し、寛永七年の比、穂波郡合屋の中村の白旗山の北の麓に移りて製し、寛文七年より上座郡鼓村にて製す。頃年福岡城の南田嶋村の東の松山に製す。

この記事の内容は六つに要約される。

  1. 鷹取焼の由来は、「朝鮮軍」(文禄慶長の役)の時、黒田長政の手に捕らわれた人たちのなかに、焼き物の陶工で巧みなものがいたので、名を八蔵に改めさせた。
    加藤清正の手にも新九郎という陶工もいた。両人とも高麗に井土という村の出身者で、八蔵は新九郎の聟で、八蔵の妻も日本にやってきた。

  2. 長政は家臣の手塚水雪に命じて、水雪の居城鞍手郡鷹取で八蔵に焼物を焼かせた。
    その後、新九郎も招き入れて共同で焼いた。程なく新九郎は死去したが、これが鷹取焼であるという。

  3. 二代藩主忠之の時、伏見奉行の小堀遠州のもとに八蔵とその子八郎右衛門を派遣し、教えを請う。その後遠州好みを制作する。八郎右衛門病気にて死す。
    末子新九郎が家をとり、八蔵(二代)を継ぐ。

  4. 五十嵐次左衛門については、唐津寺沢家に仕え、その後浪人して筑前に来る。
    忠之が召し出して、八蔵と同じ鷹取において焼物をつくらせる。

  5. 遠州が名付けた茶入れは染川・横岳・秋の夜で、横岳は酒井讃岐守忠勝へ、秋の夜は小笠原山城守長頼にそれぞれ忠之が贈った。染川と同じ時製した耳付きの茶入は名はないが、横岳と似ているのもので、黒田家の手元にある。

  6. 高取焼の変遷については、次のように記述されている。
    慶長一九年(1614)に内ヶ磯、寛永七年(1630)に白旗山、寛文七年(1667)鼓村で、元禄一七年(1704)南田島村松山(早良郡田島)の内で焼く。
    高取焼の発祥の窯の年代は、ここでは文書の中でとらえることができる。
    すなわち、手塚水雪が高取焼の創業に関与していることからである。

内ヶ磯窯跡 内ヶ磯窯跡
直方市教育委員会「古高取 内ヶ磯窯跡」より

黒田長政が筑前入国した時期から宅間窯を築窯した時期との間に五年前後の年月があるが、この時期に窯の立地条件のよい所を探求した後に、鷹取山の麓に開窯した。

そしてこの手塚水雪がこの筑前六端城のひつである鷹取城を守るようになるのは、嘉麻郡益富城主の後藤又兵衛が出奔し、鷹取城を守っていた母里太兵衛が大隈城に入り、その後釜として慶長一一年(1606)に手塚水雪が入城したためである。

これが高取焼の誕生年と考えられる。手塚水雪が鷹取城主となった時をもって、高取焼発祥の根拠としたい。これが開窯400年祭の基点である。

なお、詳細には直方市教育委員会が一九八三年に刊行した報告書『古高取永満寺宅間窯跡』を参照されたい。

(牛嶋英俊)

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